はじまりは

ビリヤード、だった気がする。

お仕事を辞めて、数日後、上司からメールをいただいた。
今までのお礼と、食事のお誘い。

で、お食事をすることになって。
きっとごちそうになっちゃうんだろうなと思って、
私はマリアージュフレールの紅茶を持って。
（上司はいつも職場で紅茶を飲んでたから）

お食事したあと、ビリヤード、やらない？と聞かれて、
やったことないですけど、と、ついて行った。

でも、教えてもらうにあたっては、手や体に触れられるわけで。
どうしよう、と思ったけれど、そこで拒絶するのも大人気ない。
まさか下心もないだろうと思っていたので、されるがままにしていた。

今思うと、それが、まちがいの一歩だったのかな、と、思う。

前もそうだった。大学4年のとき。
慕っていた17歳上の人。
食事をして、ゆっくりできるところに行こうか？って。
ついて行ったら、ホテルの前。
私はそれまで、誰とも付き合ったことがなかった。
だからもちろん、ホテルに入ったこともなかった。
だから、はっきり断ればよかったのに。
「ああ、ホテルの前で揉めるのってみっともないな。
とりあえず、中に入って話し合おう」なんて冷静に考えて。

でも、入ってしまった以上、そんなわけにはいかず、
それから結局、2年、その人と付き合った。

私は、周囲からは、穏やかで落ち着いた人間だと思われている。
でも、もとからそういう人間なんじゃない。
そうしようと、努力してる。

だから、みっともないことや、大人気ないことは、極力したくない。

でも、そういうプライドから、まちがいが、始まってしまう。

そして、まちがいを正そうとする強さは持ち合わせてない。
だって本当は、寂しいから。
本当は、誰かに甘えていたいから。